ココロのつぶやき@はてなブログ

南の島からの帰国子女で作家。2005年『講談社X文庫新人賞』受賞。現在、『文学フリマ東京』を軸に作品を発表中。

<立ち読み>ウソのようなホントの話 4 ~妖(やらかし)の新人女優~

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SNSで語れなかった事実がここに……

 

ひょんなコトから新人女優(当時23)を【家賃/光熱費/食費 無料】で面倒を見ることにした愛奈  穂佳(あいだ  ほのか)。

 

最初からうすうすと気づいてはいたものの、なんとか彼女を救いたくて奮闘したけれど……家の業+@は手強く、霊能者でも霊媒師でもない愛奈  穂佳(あいだ  ほのか)は、自分の身を護るだけで精一杯だった。。。

 

一連の事件の裏側には、魑魅魍魎の影。

2022年11月現在も終わらない生霊/呪いの事件は、どういった経緯で引き起こされたのか。

 

一番怖いのは、この世のものではないモノか、背徳棄義したニンゲンか……

 

 

【目次】

 

・はじめに

#001 出会い

#002 引っ越し

#003 家賃/光熱費/食費『無料』の理由

#004 居候前半の生霊たち

#005 PMSに便乗する大蛇

#006 2021年3月の『事件』

#007 居候後半は『嵐の前の静けさ』だった罠

#008 引っ越し後の呪術合戦

・おわりに

 

・2022年5月29日 初版発行

エッセイ/文庫サイズ/170ページ/1,000円(イベント価格)/1,300円(通販価格)

 

 

 

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<立ち読み>ウソのようなホントの話 3 ~アナタの傍に息づく怪異~

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視ることしかできない愛奈 穂佳(あいだ  ほのか)が、過去に受けた相談の中で記憶に残る出来事をお届けします。

 

視ることしかできないので、相談されても解決することはできませんので、現在、相談は受け付けておりません(^^;

 

 

【目次】

 

・はじめに

・#001 間借りの話

・#002 お札の家の話

・#003 無料より高いモノはない話

・#004 汚部屋と再利用の話

・#005 古ゴミの中の神棚の話

・#006 安産守の話

・終わりに

 

・2022年5月29日 初版発行

小説/文庫サイズ/64ページ/1,000円(イベント価格)/1,300円(通販価格)

 

 

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<立ち読み>節句の付喪神〜結華先生の不思議なお話〜

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【立ち読み】

 

鸛巣寺(こうそうじ)

 

コウノトリの巣と書いて、鸛巣寺(こうそうじ)

 

漢字から想像できるように、子宝・子授け・子育てにご利益があるお寺として歴史ある寺だったのが、いつの間にか、水子供養でも名が知れるようになり、そこから派生して『人形供養』でも有名になり、子に関することなら鸛巣寺(こうそうじ)!と全国区で認知されるようになった。

 

良くも悪くも『子』に関することには特化している寺の名に恥じることなく、鸛巣寺(こうそうじ)では、いわゆる『捨て子』のケアや妊娠中絶や育児が困難である社会的に孤立した女性の相談を承っているし、『認定こども園』と『学童保育』も運営している。

 

両方とも、通っている8割の家庭が母子家庭、父子家庭、両親共働きでも低所得、生活保護、ネグレスト、毒親……と、何かしらの事情を抱えており、堂々と子育てを『認定こども園』や『学童保育』に丸投げしている状態だ。

 

寺も園も学童も決してそれを良しとしているわけではないが、頼ってくる親子には分け隔てなく手を差し伸べている。

 

 

                       ※

 

 

「みんなーっ! 結華(ゆか)先生の『不思議なお話』、はっじまるよぉーっ!」

 

鸛巣寺(こうそうじ)の住職の娘の宮良結華(みやら ゆか)は二十三歳の新米だけれど、保育士と幼稚園教諭の両方の資格を取得しており、目下、『学童保育』で働く『放課後児童支援員』になるための資格を取得しようと認定資格講習を受けている。放課後児童支援員ではなく『補助員』ならば資格は必要ないが、養い子が現在小学校3年生なので、彼女の成長を見守るのと同時に責任を持って育てたい思いから『放課後児童支援員』になりたいのだ。

 

今は『学童保育』の『補助員』の立場で小学校中学年(3年生と4年生)の世話をしている。

 

おやつの時間が終わり、おやつの片付けから教室の掃除などの当番仕事が始まろうとした時に結華に声をかけられた児童たちは、控えめだけれどわくわくした感じで集まって来た。

 

この異年齢のクラスも、家庭環境が原因で一癖も二癖もある子になってしまった児童たちが多い。最初の頃は、申し合わせたわけでもないのに全員が斜に構えて結華を警戒していて驚いたけれど、結華が楽しそうにしていると徐々に児童たちもつられてにこにこしだすようになり、少しずつなついてくれるようにもなってきた。全員が全員、結華に心を開いたわけではないが、警戒心が薄れてきているのが感じ取れるだけで結華は嬉しかった。それぞれが小さな幸せや楽しさをたくさん経験して心豊かに成長してほしいと願ってやまない。

 

結華先生の不思議な話。

 

意外と嫌がられてはいないようだけれども、結華は慢心せずに取り組んでいる。

 

特に今日は、いつも以上に気合は入っているし、緊張もしていた。

 

結華は呼吸を整えてから、今一番心配している小学校3年生の女児に声をかけた。

 

「理緒ちゃん!今日は何月何日?」

 

「……2月2日」

 

抑揚のない声で、理緒は答えた。

 

理緒は話しかければ答えるし、受け答えもしっかりしているけれど日増しに目はうつろ度合いが増し、ふと気づけばひとりでぼーっと宙を見ている時の目の焦点が合っていないように見えることも増えてきた。

 

どことなく元気がない様子の理緒とは対照的に、最近、理緒が肌身離さずにぎゅっと抱きしめている、60センチの煌びやかな服を着たフランス人形を彷彿させる球体関節人形は肌艶が良く、生き生きしているように見えることも結華は危惧している。

 

素人がぱっと見でも値が張りそうな球体関節人形なので、小学校3年生が気軽に手軽に普段持ち歩いていいモノなのかと心配になった結華は、理緒に訊いてみたことがある。

 

「いつから、そのお人形さんは理緒ちゃんのお人形さんになったの?」と。

 

理緒は首を傾げた。「わからない」と。

 

結華は質問を変えた。「誰からそのお人形さんをプレゼントされたの?」

 

理緒は不思議そうに答えた。「プレゼントじゃないよ。――拾ったの」

 

「どこで?」

 

「マンションのゴミ捨て場」

 

「おまわりさんに届けなくてよかったの?」

 

「わかんない」

 

「ママは何も言わなかった?」

 

「言わないよ」

 

「……」

 

結華が言葉を探していると、理緒は寂しそうな表情と消え入りそうな声でつぶやいた。

 

「ママは何も言わないよ。理緒がこの子と遊んでるとママはおじさんと遊べるから理緒のことぶたないんだ――」

 

結華はその日以来、理緒と球体関節人形から目が離せなくなった。

 

・2021年10月31日 初版発行

小説/文庫サイズ/138ページ/1,000円(イベント価格)/1,300円(通販価格)

 

 

 

 

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<立ち読み>ウソのようなホントの話 2 ~愛奈 穂佳の幽雅な日常~

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完売

しております<m(__)m>

 

後に、再版しております<m(__)m>

 

愛奈 穂佳(あいだ ほのか)が、なんてことない日常での体験した心霊&不思議体験。

 

約300話あった中から、女神舎スタッフたちと厳選した29話を収録。

 

気になるお話からぜひお読みください。

 

執筆中もPCやスマホの不具合が頻発しながらなんとか書き上げました(^^;

 

【目次】

 

#001 お盆の時期の気配
#002 曾祖母からの警告
#003 旅先での怪
#004 都市伝説だと思っていたことが
#005 人形にまつわる怪
#006 子供の霊
#007 窓をたたくもの
#008 異世界
#009 神隠
#010 名を名乗れ
#011 首無し地蔵
#012 台所の女性
#013 遊園地のお化け屋敷
#014 実在するお化け屋敷
#015 ミイラの怪
#016 鏡台に位牌
#017 鈴の音
#018 狐の正体
#019 真夜中の散歩
#020 トンネル
#021 蛇憑き
#022 ゆめうつつ
#023 弟を騙るもの
#024 呪詛の住処
#025 死神
#026 とある友人の死
#027 悪霊からの返し
#028 女子トイレで頭がふたつある霊を視た話
#029 呪ってるのに死なないの? 

 

・2021年5月16日 初版発行

小説/文庫サイズ/168ページ/1,000円(イベント価格)/1,300円(通販価格)

 

 

 

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<立ち読み>あなたの願い叶えます。ただし……(総集編)

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【まえがき】

 

元々このお話は、400字詰め原稿用紙で30枚の短編でした。

 

ありがたいことに好評でして、2011年から不定期に開催されている『リーディングシアター(朗読劇)』の脚本執筆依頼にも繋がりました。

 

ありがたいことです。

本当に。

 

短編小説をリーディングシアター用の脚本に書き換え、新人声優さんから大御所声優さんまでいろんな方に演じてもらい、未だに再演の声を頂戴しております。

 

再演実現を夢見つつ、1巻の内容を新たに【第27回  文学フリマ東京】用に書き直し、文庫サイズで100ページの作品となりました。

 

「続きを読みたい!」とのお声を頂戴し、2巻も頒布。

2巻はあと数冊で完売となりますが、先に完売した1巻の再販を望む声が多かったことから、1巻と2巻をまとめてしまいました。

 

 

【立ち読み  1巻】

 

序章

 

「Ⅰ……Ⅱ……Ⅲ……Ⅳ」

 

月明かりがかすかに差し込む窓際のテーブルで、中世ヨーロッパの『魔女』を連想させるような全身黒づくめでばっちりと化粧を施した妙齢の女が、奇妙な絵柄が人目をひくカードを、一枚一枚順番通り丁寧に並べている。

 

草木も眠る丑三つ時。

 

室内外で物音ひとつしないこの場所は、内装が内装だけに、どこかしらひんやりとした独特の空気を醸し出している。

 

ここは、彼女が主人を勤める小さな店。

 

提供しているモノは、『気休め』。

 

 

#002

 

あの三日月を武器にできたら、証拠を残さずにミナゴロシ可能よね……。

 

冴え冴えとした夜空に浮かぶ、鋭利な刃物のような上弦の月を見上げながら、美咲は栓無き事だと自覚しつつもそんなことを渇望していた。

 

(略)

 

「どうしたん?」

 

やっぱ怖気ついたか?とKARIが言外に匂わせているのを敏感に感じ取った美咲は、自己紹介はナシで、気になっていることを先に明確にしてしまおうと決めた。

 

「えっと……無料……ってわけじゃないんでしょ?」

 

「も~ちろんや。世の中、タダほど高くて怖いモンないで」

 

「――ぶっちゃけ、いくらかかるの?」

 

何事にも『対価』が必要、という現実に、美咲は一体いくらふっかけられるのだろうかと多少心配になってきた。

 

高校生だから貯金なんてあまりない。

 

だけど、お金なんて、その気なればどうにでもなるハズ。

幸い、通っている高校はアルバイト禁止ではないので、何年かかってもきっちり払おうと腹を括った。

 

さあ、いくらでもいいから提示してみてよ!と、美咲は言葉にせず全身で訴える。

 

その意気込みが伝わったのか、KARIは頼もしそうな笑みを浮かべた。

 

「うちが報酬として貰ってるんは、『カネ』やのうて『結末』やねん」

 

「――はっ?」

 

今、何を言われたのか理解できなかった美咲は、もう一度問い返した。

 

「今、なんて……?」

 

「この距離で聞こえへんかった?アンタ、耳、悪いん?」

 

「いや……そういうわけじゃなくて……」

 

「……まぁ、ええわ。人それぞれ、事情、あるし」

 

「いや……だから、そういうわけじゃな――」

 

「うちが報酬として貰ってるんは『カネ』やのうて『結末』やねん」

 

さっきより気持ち声を大きくし、発音も明瞭さを意識したKARIの言葉は、一言一句同じだった。

 

「あ……うん、ありがとう……」

 

やはり、聞き間違えではなかったのか――。

 

「でも、なんで?」

 

報酬が『金』ではなく『結末』だという意味がわからず、美咲は首を傾げながら尋ねた。

 

「うち、別に金に困ってへんし、興味もないねや」

 

「……?」

 

「うちな、自分が関わった件が『成功』にしろ『失敗』にしろ、どないなったか知りたいねん」

 

「……」

 

聞き捨てならない内容に、美咲は胡散臭そうなまなざしをKARIへと向けた。

 

「……ちょっと、『失敗』ってなんなのよ?『あなたの願い、叶えます』なんじゃないの?」

 

「あんた、見かけによらずいらちやなぁ~。そうコワイ顔しなさんなって。話は最後まで聞くモンやで」

 

「……」

 

「例えば、『ピサの斜塔』。知っとるやろ?」

 

「……知ってるわ」

 

「アレ、斜めになったから『失敗』やと思う人もおれば、斜めになったからこそ『成功』やと思う人もおる。どっちが正しいかなんて、断言できんやろ?それが価値観っちゅーモンちゃうか?」

 

「……確かに、一理あるわね」

 

「せやから、迎えた結末を『成功』と思うか『失敗』と思うかは、依頼主によって全然ちゃうねん。それでも必ず物事には一区切りつく時っちゅーのがあるさかい、それを『報酬』として教えてくれ、っちゅーとんねん」

 

「――そんなコトでいいんだ……」

 

法外な金額がかかることも覚悟した直後なだけあって、美咲は心底ほっとしていた。

 

そんなコトでいいなら……、と完全に美咲の気は緩み、KARIに対する警戒心も消滅していた。

 

「商談成立やな。おおきにっ!」

 

KARIは満面の笑みを浮かべながら美咲の手を掴んで、ぶんぶん振った。

 

「え?あ……ちょっと!」

 

あからさますぎる『魔女』の外見からは想像もつかないその子供っぽい笑顔と態度に、美咲はどう反応したらいいのか戸惑いを隠せずに苦笑いで応じた。

 

ひとしきり喜びを示した後、KARIはそのおちゃらけた雰囲気の余韻を残すことなく空気を切り替え、研ぎ澄まされた刃のような雰囲気を身に纏って美咲に尋ねた。

 

「で、どんな『願い』を『叶えたい』ん?」

 

 

【立ち読み  2巻】

 

清明神社の広大な境内の一角に、立派な二階建ての建物がある。

 

安倍晴明 図書館】。

 

そこには、貴重な文献や資料から二次創作まで幅広く『安倍晴明』に関する書物が集められている。

 

入館料は千円で、チケットを見せれば開館から閉館まで途中退室、再入室可。

 

館内は飲食禁止だけれど、隣の建物はカフェなので小腹も満たせる。

 

今も根強い『晴明ファン』には至れり尽くせりの一角だ。

 

今は昔……なくらい、その空前の大ブームが何年前だったかすぐには思い出せないくらいの年月が経っているというのに、『平安時代の稀代の大陰陽師安倍晴明』は一定の人気を保っており、全国からの参拝者は細く長く絶えずに今に至る。

 

太く短い『大ブーム』でガツンと稼いで終わるのではなく、その先も細く長く『人気の神社』として存続させるため、安倍晴明の直系であり代々神社を守っている一族のなりふり構わぬ努力も功を奏しているんやな……と、初めて訪れた図書館の入口にて花梨はその商魂のたくましさに感心していた。

 

花梨は入館料を払って図書館へ入った。

 

館内案内図を見ると、文献や資料のコーナーは小さく、同じ1階には安倍晴明をモデルにした商業出版ものが集められており、2階は二次創作のみという分け方だった。

 

花梨は迷うことなく、文献コーナーへと向かった。

 

この修学旅行では、【安倍晴明 図書館】にて日本の魔術のひとつである『呪術』を調べ、西洋の『魔術』と何が違い、どこが似ているかを比較する論文を提出することにしている。

 

――いうまでもなく、そんなのは建前で、本来の目的は、安倍晴明の末裔が『安倍晴明』を名乗るだけではなく、呪術も使えるという都市伝説が本当かどうかを確かめること、だ。

 

(略)

 

1階の文献コーナーには、誰もいなかった。

 

独りが好きな花梨なので、この状況には心底ほっとした。

 

貴重であろう数々の文献は、斜め読みでも惹きこまれる。

 

思わず集中して立ち読みをしていたことにさえ気づかなかった花梨だが、不意に背中を力強く叩かれて我に返った。

 

「――っ!」

 

突然の出来事に、声も出なかった。

 

何事かと振り返ったら、見るからにチャラチャラした服装の男が居た。

 

高校生か大学生かと思われるが……チャラい服装とは裏腹に、目つきにだけは油断ならぬ鋭さと驕りが見え隠れしていた。

 

「……」

 

花梨も素の自分で対峙した。

 

「見かけない服装。修学旅行?」

 

チャラい服装に見合ったチャラい喋り方……なのに、目つきがそれらを見事に裏切っていることに気付いた花梨は、直感で、ひょっとしてこの男が末裔の『安倍晴明』なのではないかと思ってしまい、警戒する。

 

「――せや」

 

言葉少なく肯定した花梨に、チャラ男は驚いた。

 

「え?」

 

なんや?とは訊き返さず、花梨は胡散臭そうな目でチャラ男を見る。

 

「イントネーション……関西の人?」

 

「関西人が京都へ修学旅行来たらおかしいんか?」

 

「おかしいねぇ~。関西人が通う関西の学校なら、修学旅行先が関西にはならないから」

 

笑われて、花梨はぶすっとした。

 

言われてみたら、その通りだった。

 

「……」

 

まっくろくろすけを連れてたくらいだもんな。関西人だけど京都には疎い地域からの修学旅行生だな」

 

「……まっくろくろすけ?」

 

それ自体は知っているけれど、何故、アニメに登場する煤の妖怪を連れているなどと言われる?

 

ますます警戒心をあらわにする花梨さえもおもしろがっているような様子でチャラ男は答える。

 

「ここに来る前、金比羅さんに行ってきただろう?」

 

「……」

 

正解、だった。

 

金比羅さん特有の、女たちのよろしくない念の塊が、大小様々な大きさの『まっくろくろすけ』状態で背中にくっついていたからさ」

 

「……」

 

「地元の女なら、金比羅さんの正しい参拝の仕方を知ってるから、

何かを連れて出て来るなんてことはまずない。そんな命取りにもなりかねないヘマはしない」

 

「……」

 

「大抵の観光客は表面の綺麗ごとだけを鵜呑みにしてるから、ヤバイのを平気で連れ出してしまう」

 

「……」

 

「観光客が連れてきてしまう『念』のカタチは人それぞれで、たまたま、あんたの場合は、見た目が『まっくろくろすけ』なだけだったんだけど、不思議なことに――」

 

「……」

 

花梨は顔色一つ変えない。

 

「……金比羅さんから連れ出した『念』が、あんたに懐いてる感じ、だったんだよな」

 

「……」

 

「例えるなら、同病相憐れむ、みたいな」

 

「……」

 

「そして、あんだけ重たいモノを背負ってたのにどこにも影響を受けていない」

 

「……」

 

「それと、入館して配置図を確認したらまっすぐこの文献コーナーにやってきた」

 

「――よう見てんなぁ。別にうち、アヤシイ者ちゃうで」

 

「充分、怪しいだろ。国文学専攻の大学生がこの文献コーナーに来るのは、わかる。実際、一年を通じていろんな大学から学生が来てるからな。でも、あんたは違うだろ」

 

「……」

 

「あんた、何者?」

 

「……」

 

それでも花梨は顔色一つ変えず、目も反らさずその場に佇んでいる。

 

花梨は一息ついてから、手にしていた書物を本棚に返した。

 

意地の悪い笑みを隠すことなく、チャラ男に答える。

 

「うちは、そこらに居る普通の女子高生や」

 

 

・2018年11月25日 初版発行

・2020年12月22日 第二刷発行

小説/文庫サイズ/216ページ/1,200円(イベント価格)/1,500円(通販

 

 

 

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<立ち読み>カノジョになりたい

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【立ち読み】

 

九月一日午後三時過ぎ。


都心から各駅停車の在来線で二十分ほどの駅に降り立った鬼頭
光姫(きとう みつき)は、その田舎な風景と空気感に少々面食らっていた。


想像していた『東京都』とはかけ離れた郊外さに、思わず、手元の略地図に書かれた駅名と改札口にある駅名を何度も照らし合わせてしまったくらいだ。 

 

――間違いない。
最寄り駅は、合っている。


ひとつしかない改札を出て、改めて閑散とした駅前を見渡してみた。


バスのロータリーはなく、猫の額ほどのタクシー乗り場と小さなベンチはある。タクシーは常駐していないらしく、ベンチには数人の男女が座ってタクシーを待っている。


駅周辺にありがちなファーストフード店やらちょっとした店の類も――ない。

(ある意味、最高の立地条件、なのかもね)
光姫(みつき)は事前にもらっていた略地図を見ながら、そんなことを思った。


略地図にある目的地の名称は、『世田谷ビレッジ』。


大学受験を控えた帰国子女を対象とした宿泊施設と塾が併設されている建物だ。


基本、世界各国にある現地校の卒業は六月となっている。現地の高校は単位制なので、高校卒業に必要な単位数から逆算して自分に必要な単位の教科を組み合わせて1年ずつ過ごす。


日本人学校中学部を卒業してから現地校の高校部へ進学した人と中学から現地校に
通っていた人とでは、高校卒業に必要な取得単位の関係で、日本の大学へ進学する際、現役扱いになるか一浪扱いになるか変わってくる。日本人学校がある国では、日本人学校中学部を卒業した時点で現地校の高校部で取得すべき単位のいくつかは取得済みとなるので、飛び級ではなく、ふつうに詰め詰めで時間割を組んで各学期の試験に合格していけば、2年半で高校を卒業できることが可能になる。

 

その場合、日本の大学の帰国枠受験は十月から十一月に行われるので、翌春から現役大学生。2年半卒業を狙わない場合は6月が卒業なので3年半で高校を卒業することになり、秋の大学受験に合格後、来春からは日本の高校生でいうところの一浪で大学生になるという計算だ。


世界規模で一般的なカリキュラムを使用している現地校は六月の卒業式後に八月末までの長い夏休みに入るので、無事に高校を卒業した日本人はそのまま帰国し、関東近郊の大学を受験したいのであれば東京にある帰国枠受験専用の塾に七月八月九月と通い、十月十一月に大学受験をするというのがお決まりのコースとなっている。


光姫(みつき)もこの六月にシンガポールの現地校の高校部を卒業しているから、遅くても七月一日から東京の大学を受験する皆と一緒にこの『世田谷ビレッジ』で世話になるのが自然な流れだったが――敢えて、時期をずらした。

 

本音を言えば、帰国枠受験をするならば『世田谷ビレッジ』の世話にならなければ合格できない――と言われているのは承知だが、そこの世話にはなりたくなかった。


しかし、光姫(みつき)にはどうしても現役で大学に合格して叶えたい夢があった。独学で現役合格できるほど甘くはないのが大学受験だと見聞きしていたのもあったので、光姫は仕方なく、『世田谷ビレッジ』の世話になることに決めたのだった。


理屈で割り切れるほど心の造りは単純ではないことを持て余しながら、光姫(みつき)は改札を出ても前に進めなかった。


夢を叶えたければ、後戻りはできない。


夢を叶えて自分で自分を救うか、それとも、そもそもあの出来事
を無かったことにして潔く違う人生を歩むか――この期に及んでも、光姫(みつき)は『逃げ』の一案を捨てきれずにいた。


今なら、誰にも知られず、全てから『逃げる』という選択もできる!
逃げて、新天地で新たな人生を歩むことだって――許されるはず。 

 

――私は生きているのだから!


数えきれないくらい言い聞かせてきたこの言葉も、最近では心の中で空しく消えていく感覚が強くなり、それがとても嫌で言いようのない怖さが増してきている。


逃げるべきか進むべきか―― 自分のことなのに道を決めかね、俯いて立ちすくんでいたら、ふいに声をかけられた。


「ひょっとして、方向音痴?」


人懐こく、さわやかな声と言い方だった。

「――?」


気軽に気さくに声をかけられたけれど、その声に聞き覚えはなく、空耳かと思って顔を上げたら、光姫(みつき)の目の前にTシャツにGパンというラフな格好の大学生くらいの男がにこやかに佇んでいた。


知らない男、だった。


(ナンパ?こんなド田舎で?)


思わずまじまじと男を見て――光姫(みつき)は気づいた。


この男、目と鼻の先にあるタクシー乗り場のベンチに座っていたヤツだ。


光姫(みつき)は駅周辺を見渡していた時にこの男もチラッとこっちを見たような気がしたものの、気にも留めなかった。


(ツイてないなぁ~。面倒くさいなぁ~。ナンパに関わってる暇なんてないのにー)


あからさまに不機嫌丸出しなまなざしの光姫(みつき)を意に介することなく、男は続けた。


「遅くても今日の昼前には入寮って聞いてたんだけど……新宿乗り換えで迷子になった?」

「……」


打って変わり、光姫(みつき)は警戒心を強めた。


(――『世田谷ビレッジ』の寮生、か……)


知り合いではない者が、いつ到着するかもわからないというのにわざわざ駅まで迎えに来たくなるくらい、既に自分は寮生にとって好奇な存在ってわけか......と、光姫(みつき)は苦虫を噛みつぶしたような表情になった。


そう思う心当たりは十分にある。


同じシンガポール組で、光姫より先に帰国して『世田谷ビレッジ』に入寮した連中の誰かが、おもしろおかしく……かどうかは知らないけれど、自分の事を話したのだろう。


光姫(みつき)自身、隠すつもりは毛頭ないが、自分の知らないところで憶測交えてアレコレと勝手なことを言われるのは今も昔も不愉快極まりない。


人の口に戸は立てられない、とは言い得て妙だと、光姫は改めて悔しさに唇をかんだ。


「あ、ごめん。気に障った?」


どうやら声をかけてきた寮生は、初対面の相手を『方向音痴』呼ばわりしたことで気を悪くしたのだと思ったようだった。


「……」


光姫(みつき)は肯定も否定もせず、ただ睨みつけた。


寮生相手に不用意な言葉を発したくなかったのだ。


「ごめんごめん!――」


「聖琉(ひかる)くーんっ!」


甲高いアニメ声が、寮生の言葉を遮って割り込んできた。


三者の登場に光姫(みつき)と『聖琉(ひかる)』と呼ばれた寮生が声のした方を見やると、アニメ声の持ち主とは思えぬ大柄で巨漢な女が、満面の笑みを浮かべながらこちらへ駆け寄ってきた。


声はアニメ声でかわいらしく、着ている服も小物もロリータでコーディネートはばっちりきまっているのだが……いかんせん、体型が……大柄なだけならまだしも、かなりの肥満で……それは残念な容姿だった。


これで普通体型ならとってもかわいいのに…….と思いながらアニメ声の全身を見ていた光姫(みつき)はふと、何かの違和感を覚えた。


アニメ声は、肩で息をしている。

 

全力で走ってきたかのような息の整え方をしているが、何故かそれがとても不自然に見えてしまったのだ。


どこからなのかは知らないが、肩で息をするくらいの距離を全力疾走してきたのであれば、頬は上気するだろうし、顔全体はうっすらと汗ばむくらいにはなっているのではないか?と思うのだが、彼女を見れば見るほど、そんな風には見えないのだ。

 

いたって、普通。近距離を歩いて移動してきた時の感じにしか見えない。思えない。


(彼女は……どこから……来たんだろう?)


光姫(みつき)はざっと周囲を見渡してみた。

 

見晴らしの良い駅前だ。

 

誰かが走って来たら、すぐに気づけると思う。

 

タクシー乗り場のベンチにも、彼女はいなかった。

 

改札付近にコンビニでもあれば、たまたま偶然、店内から同じ寮生の姿を見かけたから店を出て合流してみた……というのも有り得るが、この駅にコンビニはない。


あるのは、公衆便所だけ。


(お手洗いに.……居た?)


いや、トイレに居てもいいのだ。たまたま、トイレから出てきたら知り合いがいたので駆け寄って来た――は、十分あり得る。

 

それもまた『普通』のことだ。


ただ。


トイレからここまではさほど距離はない。

 

少し大きめの声をかけながら速足で来ればそれで済む。

 

なのに、彼女は、全力疾走してきたとしか思えぬ息の整え方をしているのだ。

 

そのギャップが不自然極まりなくて、光姫(みつき)には引っかかったのだ。


穿った見方をするのであれば、どれくらいの時間だったかは置いておき、彼女はトイレに潜んでいて、頃合いを見計らって出てきた。ソレがバレないために、あたかも遠くから全力疾走してきた風を装った。

 

――それならば辻褄が合い、この不自然さにも納得するのだが。


(まさか、ね.…….)


そんなことをする意味と目的がまったく思い浮かばない光姫(みつき)は、自分の思いつきのくだらなさに苦笑した。


(バカバカしい現実逃避……)


光姫は軽く自己嫌悪に陥った。

 

期間限定とはいえ、これから始まる意に染まぬ場所での生活に怖気づいているから、こんなどうでもいいコトに意識が向くのだろう。

 

もっとちゃんと現実を見据え、目的達成のために1分1秒を有効活用しなければ!と改めて気合を入れ直し、迎えに来てくれた寮生――聖琉(ひかる)、と呼ばれていた――を見てだじろいだ。


(え?なに?どうしたの?)


聖琉(ひかる)は、アニメ声に対してあからさますぎる嫌悪と拒絶を発していた。


今は近寄るのをやめておこう、と、誰もが思うであろう空気を全開で出しているというのに、息を整え終えたアニメ声は上機嫌で彼の腕を取った。

 

しかし、次の瞬間には、乱暴に振り払われる。

 

――それでも、アニメ声は驚きもしなければ傷つきもしていない
様子で……ただただ、うっとりとした様子で聖琉(ひかる)だけを見ていた。


(なに……この子……)


悪寒が走った。


アニメ声は光姫(みつき)の存在には気づいていないとしか思えぬ態度で、聖琉(ひかる)に話しかける。

「聖琉(ひかる)くん、気づいたら姿が見えなくなっちゃってたから心配したよ?」


「……」


聖琉(ひかる)はアニメ声から視線を外したまま答えない。


「ま、あんな空気の中に居たくないのは同じだからわかるけどねー。遊びに出かけるなら誘ってくれたらよかったのにー」


「……」


「この時間から出かけるなら夕飯は外?どこ行く?新宿?」


「……」


再び、アニメ声は聖琉(ひかる)の腕を取ろうとしたが、聖琉に邪険にあしらわれた。


その軌道で初めてアニメ声はそこに佇む光姫(みつき)を視界に捉えた。

 

「……」


アニメ声は無表情で光姫(みつき)を上から下まで一瞥した後、おもむろに言った。


「ふーん……。聞いていた話から想像してたのとは、違うなー」

 

「……」

光姫(みつき)はアニメ声を見据えた。


アニメ声は揶揄するような挑発するような......微妙なニュアンスで続けた。


「――『死神姫』」


「――っ」


「それとも、『デス・プリンセス』、略して『デス・プリ』の方が通りがいいのかな?」


「心暖(こはる)っ!」

予想していたとはいえ、改めて『現実』を突き付けられた光姫(みつき)が思わず構えてしまったのと同時に、聖琉が怒気をはらんだ声でアニメ声――心暖(こはる)、という名前らしい――を制した。


「ま、心暖(こはる)はたいして興味ないからいーんだけど」


心暖(こはる)は再び聖琉(ひかる)に目を向けた。


「ねぇねぇ、聖琉(ひかる)くん。どこ行くの?新宿?新宿なら心暖(こはる)、行きたいお店あるんだー」

甘えるような声と表情で心暖(こはる)は聖琉(ひかる)を見上げたが、聖琉(ひかる)は視線を逸らしたまま冷たく素っ気なく答える。


「どこにも行かねーよ。迎えに来ただけだから」


「迎えに?」


心暖(こはる)の声のトーンは険をはらんだ低いものとなり、その表情は般若を連想させた。


(この二人......一体なんなの?どんな関係?)


困惑している光姫(みつき)に聖琉(ひかる)は目を向け、やわらかな表情で説明した。


「その略地図、わかりづらくて不評なんだよ。方向音痴でなくてもそれ見ながらだと迷うから、新入りがやってくる日は、友達の誰かが迎えに行くのが通例みたいになってる」


「聖琉(ひかる)くんは、『死神姫(デスプリ)』の友達じゃないじゃん!なんで聖琉くんが迎えに来てんの?」


これ以上にないくらい不機嫌な心暖(こはる)の言葉を隠れ蓑に、光姫(みつき)は思わず溜息をこぼしていた。

――友達。 

 

友達の誰かが迎えに行くのが通例みたいになっている――か。 

 

そこそこの人数である『知り合い』が先に『世田谷ビレッジ』に入寮しているという のに、誰一人として光姫を迎えに来ようとは思わなかったらしい。 

 

アイツでさえも――。 

 

それが、現実。

 

体よくすべてを押し付けられた感に苛まれる。

 

悔しいやら哀しいやらなんともいえない気持ちになってしまった時、スーツケースが 動いた。 

 

何事かと意識を現実に戻したら、聖琉(ひかる) が光姫(みつき)のスーツケースを手に取って歩き出していた。 

 

「あ……」

 

 「行こう」

 

 「あ、うん.……」

促されるまま、光姫(みつき)も歩き出した。


「えーっ?なんで~?聖琉(ひかる)くん、新宿、行くんじゃないのぉ?なんで迎えに来てんのよぉ~!ねぇねぇ!待って~」


心暖(こはる)は慌てて聖琉(ひかる)を追いかけ、まとわりついている。


聖琉(ひかる)は無視で対応している。


光姫(みつき)は何も考えず、心を無にして、今日からしばらく世話になる『世田谷ビレッジ』へと向かった。

 

・2020年11月22日 初版発行

小説/文庫サイズ/210ページ/1,000円(イベント価格)/1,300円(通販価格)

 

 

 

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<立ち読み>愛奈 穂佳 短編集ー恋ー

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【目次】

 

・#001  うらはら

・#002  微笑

・#003  リアル

・#004  微笑2

 

【立ち読み】

 

【うらはら】

 

―――ヴァサバサバサバサッッッ!


いくら背後が山で隣が動物公園という、東京都とは思えないド田舎な大学の敷地内とは言え、こんなに大きくて威圧感のある鳥類のはばたきが近くで聞こえるなんてありえない!


せっかく、宵闇迫るカフェテリアのオープン・テラスで、憧れの宇賀神(うがじん)先輩とサークルの夏期合宿について打ち合わせをしつつ、そのまま……ちょっぴりオトナな夜に持って行こうとがんばっていたのに!


今日、この日を迎える為に、あたしがどれだけの手回し、根回し、その他諸々苦労したと思ってるのよっ!


それはもう、聞くも涙、語るも涙な恋する乙女の壮絶な駆け引き話なんだけど――今はそれどころじゃないので、割愛。


ここは、正真正銘の『東京都』なのに、大学周辺にビルや高層マンションはなく、日が暮れると純粋な闇に包まれる。


大学構内だって、必要最低限の灯りしか設置されていないから、物音がしてもすぐにその正体を見極めるのは至難の業。 

 

―――ヴァサバサバサバサッッッ!


さっきより更に近くで同じ音を耳にしたと思った瞬間―――!


「わぁおっっ!」


「ひぃぃぃ――っ!」


無邪気な子供のように好奇心たっぷりな驚きの声をあげた宇賀神
(うがじん)先輩と、声にならない悲鳴をあげて、椅子に腰かけながらも腰を抜かしたあたし。


あたしは腰を抜かしながらも音の出所へと視線を移し、絶句。


「.…………」


絶句しながら、思わず二度見してしまった。


宇賀神(うがじん)先輩の存在が、宇賀神先輩への恋心が、あたしの何気ない(考えなし、とも言う)言動のストッパーになってるから、とりあえず、あたしにとって今のこの状況はこう着状態になったけれど。


許されるのなら、叫びたい!


全身全霊で、叫びたい!


全力を振り絞って、悲鳴もあげたい!


嘘だ嘘だ嘘だ!


こんなコトが現実に―――

―――ヴァサバサバサバサッッッ!

 

……起こってる。 

 

「……」 

 

涙が出そうになるのを必死にこらえてるあたしの正面では、宇賀神(うがじん) 先輩が身を乗り出 してあたしの横を嬉しそうに見ている。 

 

宇賀神(うがじん)先輩は、あたしが所属しているサークルの会長。 

 

あたしより1回生上の、3回生。 

 

身長は180センチ。

 

目鼻立ちがしっかりした顔立ちで、一見クールに見えるんだけ れど、ちゃんと相手と向き合って話をするからか、意外に百面相。

 

ついでに、笑顔がとっ ても魅力的!

バランスが取れたスタイルだからか、何を着ても着こなしてるし、センスも抜群。


誰がどこから見ても、宇賀神(うがじん)先輩はイケメンの部類に入ると思う。


当然の帰結で、宇賀神先輩はモテる。


在籍している大学内だけではなく、サークル同士のつきあいがある他大の女子からもモテまくってる。


だけど何故か、少なくても今現在、『彼女』はいない。


かといって、モテる自分に酔ってるナルシストではないし、自分をめぐって火花を散らす女子大生たちを眺めて楽しんでいる悪趣味な人でもない。


あ、今流行の……というか、いつの間にやら市民権を得た、通称『BL』の人でもない。


宇賀神(うがじん)先輩はイケメンだけどチャラくない、それなりに大学生活を満喫している平均的な大学生だと思う。


ただ。

趣味や興味のある事柄には熱中しすぎるタイプなので……本領発揮した先輩についていける女子がいないんだと思う。


宇賀神(うがじん)先輩の偽りない真の姿を目の当たりにして志半ばで去って行った、彼の彼女になりたかった先輩や同級生や他大の女子大生たちを、あたしは何人も見てきた。


彼女たちの気持ちも、よくわかる。

 

たぶんこういう気持ちが積み重なっちゃってもう無理!って思ったんだろうなぁ~って感じること、多々だから。


それでも、あたしは宇賀神先輩が好き。


好きだから、どんな試練にも耐えてみせるし、障害だって蹴散らしてやる!


……と、常日頃から自分を鼓舞し、自分立ち上げをしていないと、すぐにココロがあっさりと折れてしまうであろう状況なのよね……。


現実は時に無情で、時に過酷だわ。


宇賀神(うがじん)先輩!

嗚呼……宇賀神(うがじん)先輩!


せつないです!


とてつもなく、せつないです!


愛しさとせつなさと、言葉にできない、したくない複雑な気持ちから……叫びだしそうです!


特に今は、このままだと発狂しそうです!


宇賀神(うがじん)先輩、助けてください……。


お願いです……。


気づいてください……。


この状況が……『普通』ではないことに……。


嗚呼……宇賀神(うがじん)先輩……貴方は何故―― そこまで思って、あたしは宇賀神先輩から少しだけ視線を逸らし、小さくかぶりを振った。


何故、と問うだけ愚問というもの。

それもひっくるめて、あたしは宇賀神(うがじん)先輩が好きなんだから……。


だから……そのまま……あと数ミリでキスできそうな至近距離だっていうのに……あたしを通り越し、まるで黒曜石のような輝きを放つ黒い瞳で覗き込むようにして見つめている宇賀神(うがじん)先輩の視線の先は―― 

 

「すっげぇ~!本物のインドクジャクじゃん!俺、間近で見たの、初めてぇ~っっっ!ひゃっほう~っ!」


「……」


敢えて、イマドキでは珍しいであろう黒髪のストレートをトレード・マークにし、手の込んだナチュラルメイクで年相応プラス・アルファの魅力を演出している、後輩女子大生ではなく、突如出現した【インドクジャク】に視線が釘付けになり、ココロを奪われるなんて……。


日々、さりげなく自然な雰囲気でお近づきになろうとあれこれ努力している自負があるから、こうもあっさり愛しい人の気持ちを鷲掴みにされてしまうと、泣くに泣けない。

しかも、相手が年上だろうと年下であろうと、『絶世の美女』ならまだ諦めもつくけれど、【インドクジャク】て!


どのパーツで張り合えばいいんですか!?


実は宇賀神(うがじん)先輩、深層心理では、きらびやかな満艦飾メイクが好みなんだろうか……。


嗚呼……せつない。


 

【微笑】

 

「今度はなんなんだ……?」


本当に心底疲れきったような表情と声音と微苦笑を浮かべながら、美術部部長の新井は1学年後輩の新入部員、麻葵(まき)のウエストをじぃーっと見ている。


美術室の窓を背につま先立ちをしている麻葵は普通に制服姿だったが、そのウエスト部分には何故か紐がまかれていたのだ。


誰がどこからみても奇妙なその姿を、感性豊かな美術部の部長は看過できなかったようで……部長に興味を抱かせることに成功した麻葵(まき)は、人知れず内心ガッツポーズをした。


「あ、コレですか?某ダイエット雑誌に書いてあったんですよ~。ウエスト引き締め&維持に効くって。ついでに、前にも説明しましたけど、つま先立ちしてるとふくらはぎが細くなるらしいんですけど......多少は効果あったように見えます?更についでに、太股も、も少し引き締めた方が、見た感じ、全体のバランス良くなります?」


ここぞとばかりにつま先立ちの姿勢正して軽くポーズを意識し、満面の笑みを浮かべる麻葵(まき)に、新井は深く溜息をついた。


「あのな、工藤」


「麻葵(まき)、でいいですよ、部長」


「……工藤、オレに毎日毎日同じことを言わせるのも、その何かのエクササイズの一環なのか?」


「う~ん……それは微妙に違いますね~。部活中に毎日毎日何か同じことを言われるなら、『もうちょっとこっち向いて』とか『あ、その角度いい!』とか、ポーズについてこまかく指示される内容がいいです~♪」


新井は深く嘆息した。


「だから」


「はい♪」


今日も今日とて昨日までと変わらない平行線な会話にしかならないだろうと思いつつ、それでも隙あらば少しでいいから現状打破できるように…….と麻葵(まき)は笑顔の下で気を引き締める。

「何度も言ってるけど、俺は人物は描かないんだって」


「今日はそうかもしれませんが、明日はわかりませんよね?部長に描いてほしい為に体型整えようとがんばってる私を見てたら、きっと気が変わりますよっ♪部長は『食わず嫌い』なだけだと思います♪」


だから私を描いて~♪と、麻葵(まき)は言葉ではなく笑顔でアピールする。


いつもならココで部長はなんとも言えない表情を浮かべながら同じ事を麻葵に言う。


『人のことより、まず今は自分のことをなんとかしろって。退部するやつが続いたお陰で、部を存続させるのに必要な部員数を確保できなくて、廃部寸前のところ助けてくれたのはお前だけど......』


『でしょう?♪』


『入部してくれて助かったけれど、活動証明のために、毎年恒例の展覧会には必要な人数分の作品を出展させなきゃアウトなんだからさ』


『知ってますよ』


『ほんと、頼むよ。何でもいいから描いてくれって』

……いつもの部長なら軽い小言と懇願を口にして自分の作業に戻るのだが……今日は一呼吸置いてからこんなことを麻葵(まき)
に言った。


「食わず嫌い……確かにそうなのかもしれないけど、だったら、お前もだろ?」


「え?」


「絵画鑑賞が好きなら、絶対描けるのに」


「……」


「どんな絵でもいいんだけどさ、絵を見た時、その絵から何かを感じられるから、工藤は絵画鑑賞が好きなんだって言ってたよな?」


「……あ、はい……」


「何かから何かを感じられる感性があるなら、その感じたことを目に見えるカタチにすること、必ずできるハズだと俺は思ってる」


「……」


「それは『小説』でも『音楽』でも『絵』でもなんにでも当てはまると思ってるし、その中で工藤は『絵』を選んだわけじゃん?だから、本当は描けるんだと思うよ」

 

 

【リアル】

 

「――俺、まだ、間に合う……かな?」


「……え?」


「取り戻せるかな――?…t年色々」


「……」


何か気のきいたコトバを......と私は考えたけれど、私の頭には何も思い浮かばなかった。

 

でも、伝えたい。

 

伝えたいんだ、という想いはあったので、私はそれをそのまま口
にしてみた。


「あんたが取り戻したい、って思うなら、絶対、全部、取り戻せると思う。時間はかかるかもしれないけれど、諦めなければ、大丈夫だと思う。今までだってそうだったじゃん?」


「……」

 

「……」

今まで、どんなに苦しい戦いだって、最後の最後まで瞭冴(りょうが)は諦めないで全力でプレーしてきた。

 

私も何度かそれを見ている。

 

そうやって、瞭冴は勝ち続けてきた。

 

負けた時も完全燃焼していて『次』に活かしてきた。


だから大丈夫だと私は信じている。


「……そう……だよな」


「うん」


少しだけの笑顔。


さっきとは違う、ちょっとあったかい沈黙が訪れた。


そう。

 

瞭冴なら大丈夫。


沈黙が自然に去った時、大きく伸びをしながら瞭冴が言った。

「よし。オーケー!英語は今日の分のノルマ達成!次、国語!」


「今日は『文学史』だったよね?」


「そうだ。……ああ……めんどくせー」


「論説文より全然楽だって!」


「何が楽なんだよ」


「トランプの神経衰弱の要領で、作品名と作者名を覚えればいいだけなんだから!」


「それがめんどくせーんだって!」


言いながらも瞭冴はテキストを開き、開いたと思ったら、すっとんきょうな声をあげた。


「はぁ~?『破戒』?何これ?誤字じゃねーの?『戒』の字違くね?『はかい』って物壊すことだろ?『戒』って、字、違うんじゃねー?」


「あ~の~ねぇ~!」


「つーか、破壊ってなんのカミングアウトだよ?どんな話だよ?歴史に残るような破壊って、何壊したんだよ?」

「……」


「タイトル、パス。わかんねー。作者から考える。『しまざきふじむら』?」


「瞭冴(りょうが)……」


「なんだこれ?『しまざきふじむら』って...お笑い?コンビで小説書いてんのか?」


「はあ……」


「え?なに?これはなんて読むんだ?にはていよんめい?あ、ふたば?……ふたばてい?どっかのラーメン屋か?」


「あのねぇ……」


「何?ラーメンの話とか歴史に残っちゃってんの?やっばいじゃん!そんな話、授業でやったっけ?俺、記憶にねぇ~」


「……」


私は気が遠くなりそうだった……。


千里の道も一歩から。


継続は力なり。

中一・中二の積み重ねがないんだからこんなモンよね。

 

果たして私はどこまでコイツを鍛えることができるんだろう……。


あぁ……現実ってオソロシイ。


でもコレが正真正銘の現実(リアル)なんだよね……。


とは言ってもコイツもバカなりに前向こうとしてくれてるし……さて……どうしようかな……。

 

 

【微笑 2】

 

「終わった……何もかも……」


まるで昔の漫画、明日のジョーのセリフのように力の抜けた表情と声音で、美術部部長の新井はボソっとつぶやいた。

 

一学年後輩で、この春美術部に入部した女子部員の麻葵(まき)は、いつもとは全く違って覇気のない様子の新井を、やはりいつもとは違って少し離れた距離を持ってじぃーっと見ている。


麻葵(まき)がいつも定位置にしている美術室の窓際に椅子を置き、力なく座っている新井に「近づいて声をかけたい」そう思ってはいる麻葵だったが……何故そんな微妙な距離感で新井を見ていたかというと。


彼の細くて繊細そうなその右腕には……いかにも頑強そうなギブスがされていたのだ。


誰がどこから見ても痛々しい部長の姿に、密かな恋心を抱いている麻葵はかける言葉を見つけられずにいた。


「展覧会ではせっかく工藤が頑張ってくれたのにな.……オレがこんなんじゃ、廃部も覚悟しなきゃ、だな……」


描く事に興味はあったけど、全然絵なんか描いた事のない麻葵(まき)に、新井は色々と教えてくれた。

最初はみんなが描いてるのを見ていて、新井の傍に居られて、そうして居られれば美術部の雑用係でもいいかな……と思っていた麻葵(まき)が、展覧会で入選できるくらいまで本当に一生懸命教えてくれた新井。

 

教えてくれている時は本当に熱意たっぷりで「この人は心から絵が好きなんだなぁ」と、麻葵(まき)は何度も絵に焼きもちを妬きそうになったくらい、新井にはとてもキラキラとしたオーラがあった。


「工藤があれだけ頑張ってくれたのに……」


窓の外をぼんやりと眺めている新井は、麻葵(まき)の方は全然見ずに、やはりぼんやりとそう口にした。


「何言ってるんですか。部長が色々教えてくれたからですよ~!入選できたのだって、部長の指導が良かったからで、教えてくれた部長には悪いですけれど、選んでもらえたのはビギナーズラックみたいなもんです♪」


なんとか新井の空気を変えようと、いつものように軽く答える麻葵(まき)だったが、新井は更に深刻そうな表情で麻葵に返した。


「展覧会にビギナーズラックなんかないよ。勝ち負けとか勝負の世界じゃないんだから。工藤には、やっぱり描きたい気持ちと、それをカタチにする力があったって事なんだ。オレはその後押しをしただけ。才能があったんだよ。せっかくその才能が開花したかもしれないっていうのに...」


「才能ですか!私に才能があったんですか?美貌だけじゃなく?」


「そうだよ。描きたい気持ちと、それをカタチにする力、それを向上させようと努力する力、それらを持ってる、っていう事は、才能がある、って事なんだ」


「美貌は?」


「でも、廃部なんかになったら、そのせっかくの才能を伸ばす為の、描ける環境がなくなってしまうっていう事だから……参った。オレはどうすればいいんだ……」


もう一回「美貌は?」と聞こうと思ったが、麻葵(まき)は新井の思い詰めた表情に思い留まった。

 

廃部になるという事は、麻葵(まき)にとっても大問題だった。

 

廃部なんかになってしまったら、新井と同じ場所、同じ時間を共有できなくなってしまう。

 

・2020年11月22日 初版発行

小説/文庫サイズ/66ページ/1,000円(イベント価格)/1,300円(通販価格)

 

 

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