ソフィア・アンドレェヴナ。
19世紀のロシアを代表する巨匠・トルストイの奥様です。
1862年9月、クレムリンに住む宮廷医の家系のソフィア・アンドレェヴナとトルストイは電撃結婚をしました。
お互い、それはそれはとても深く愛し合っていました。
13人の子宝にも恵まれました。
だけど。
ソフィア・アンドレェヴナはとても真面目な性格で、自分でも料理はしたし、たくさんいる使用人達の世話もきっちりとこなし、子供達も育て上げ、昼夜問わず訪れてくる夫の客人達の世話も完璧にしていました。
事前予約ナシでいきなり訪問してきた挙句に長期滞在する客、日参してくる客、いつまで滞在していくつもりなのかわからない……等、夫を訪ねてくる人達のお陰で、トルストイ家のプライバシーはあってないようなものでした。
家族団欒の時間がほしい。
夫婦だけの時間がほしい。
愛されているのは重々承知だけれど、でも、もっと自分を見てほしいし、がんばっている姿を評価してほしい……。
一言でいいから、労って欲しい……。
その思いが強くなりすぎた夫人は、とうとう、心を病んでしまいました。
『変質・二種性における偏執病とヒステリー症状の併合病状で、変質病状的傾向がやや優勢。現段階では、症状の偶発的悪化と診断』
と、診断されました。
一度彼女が錯乱してしまうと、それはそれは一騒動だったそうです。
でも、トルストイは夫人と離婚しようとは一度も考えず、できる限り夫人の要求を実現させようと譲歩したのですが、仕事にまで干渉されては、たまったものではありません。
彼にとっては、『仕事は仕事』で『妻は妻』でした。
それぞれ、全力で接していました。
夫人も、それは知っています。
だけど!!!
そこが『男』と『女』の価値観の違いなのでしょうか……。
トルストイはトルストイで、誠実で生真面目な性格だったため、ストレスから体調を崩しがちになります。
彼は彼で追い詰められていました。
公私共に。
彼は彼の宗教哲学上、私有財産を放棄し、恵まれない人たちに分け与えたいと望みますが、子供達に何も残さないのはやめてほしいと反発する夫人と対立し、夫婦の溝は深まり、とうとうトルストイは夫人に内緒で私有財産放棄の遺書を作成しました。
……が、オンナの勘で夫人にそのことを勘付かれてしまいます。
夫人はその遺書を見つけ出して無効にしようと躍起になります。
情緒不安定から起こる錯乱状態も酷さを極めます。
「遺書を出せ!」
「出さない!」
その口論の末、悲劇が起りました。
ある夜、トルストイは隣の書斎からする物音で目が覚めました。
そっと覗いてみると、夫人が、遺書はないかと家捜しをしています。
「もうダメだ……」
と、トルストイの中で何かが音を立てて崩れました。
書斎は男性の聖地です。
執筆に携わるのなら、尚更です。
そこへ、夫人とはいえ、土足で入り込んでぐちゃぐちゃにしたのです。
堪忍袋の緒も切れることでしょう……
トルストイは家出を決行しました。
夫人に対し手紙を残して出て行ったのですが、その手紙も夫人への愛が冷めたわけではないことを綴っているだけに、せつなくてたまりません。
長くなるので割愛しますが……(>_<)
家出した夫に戻ってきてもらおうと、夫人は自殺未遂を繰り返し、その都度、その旨を電報しろと家人たちに叫び(末娘だけは、彼の居場所を知っていました)、ダメ女の見本のような未練たらしい手紙を書いたり、いじらしい女の気持ちを並べたり、懇願する手紙を書き、彼無しでは生きていけないと泣き、喚き、叫びます……
そうこうしているうちに、トルストイは、家出途中、エスターパヴォの駅の駅長舎の客間で息をひきとりました。
肺炎だったそうです。
夫婦は憎悪故に離れたわけではなく、また、トルストイ自身、まさか、急死するとは夢にも思っていなかっただろうに……と思うと、やりきれません。
夫の死後、夫人はしばらく生き、夫の膨大な蔵書整理などをしますが……オンナとして、辛かっただろうなぁ……と(>_<)
(時々1位!ありがとうございます)
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